厭世庭園

As good as it gets

絵の上達の秘訣……

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この記事は真面目に読むと7分ぐらいかかりそうです。

僕は絶賛上達中だよ、お世話様!……という方には無用の長物と思われます。

そんな感じの今日の投稿なのでした。

 

そこでなんですけれども、ズバリ上達の秘訣は「絵と自分とを別々のものだと考える」ことです。

何を当然のことを……と思われる方もおられるかもしれません。

しかし、これは無意識のうちに陥りがちな沼なのです。

まず、解説にあたって「絵と自分とを別々のものだと考える」の反対を考えてみたいと思います。

物事を別の側面からみると、割と啓きが得られたりするものですし。

 

……ということで早速ながら、絵と自分とは別である……という認識の反対は”絵と自分が同じだ”ということです。

意味不明に聞こえますが、これは言い換えると自分の価値が絵で決まるということです。

自分の絵が評価された時、自分に価値があると感じられる……

その逆は、簡単に想像できようというものです。

 

そのような認識で絵を描いていると、絵をなるべく完璧に近づけようと努力し、ひたむきに絵に打ち込みがちになります。

なぜなら、絵を否定されることは自分を否定されることに等しいので、そのような状況は絶対に避けたいからです。

自尊心を持たない人はいません。

こうして絵に人生を捧げている様子は望ましく、未来も明るいように思えます。

ただ、落とし穴というのは大抵見えないように仕掛けられているもので、いつも私達を裏切るものです。

 

先ほど、絵に打ち込む理由として、絵を否定されることは自分を否定されることに等しいから……と書きました。

落とし穴とは、自分の絵に対するまっとうな改善点でさえ、自分の絵を否定する要素として認識してしまうことに尽きます。

自分と絵とが完全に結びついてしまうと、絵の改善点はそのまま自分の欠点として認識されます。

それも無意識のうちに。

それらの課題が立ちふさがったときに取りがちな行動は割と典型的で、シンプルにそれを無視したり、合理化して自分が傷つかない形で始末したり、あるいはそういう指摘をした人を貶めることで、自分の感情のバランスを取ろうとしたり……という類のものです。

私も経験がありますので書いてて痛いのですが……

 

あと、そういう悩みに陥った状態にありがちなこととして……自分の絵を褒めてくれる人が神様に見えて、ついその人の言う方向に自分の絵を曲げてしまう……とかもあります。

こちらも経験者です。

 

こういう状態は実に辛いです。

すごく努力してるのに、自分の腕前自体は、自分の認識に逆らってそれほど上達していない場合が多いわけですから。

 

ここで「絵と自分とを別々のものだと考える」ことが必要になってくるわけです。

これまでの文章を読んでくると、当然そうに見えたことが、途端に難しく思えてきていませんか?

 

実際難しいです。

特に自分の価値とか、存在理由に関わってきますと。

ただし、絵を自分と切り離すと言っても、自分の人生における絵の重要性を下げよ、ということではありません。

たかが絵でしょ……的な姿勢を吹聴する方には、私もやはり嫌悪感を感じてしまいますし……

絵の腕前自体は、私の存在価値とは関係がない。

私自身は、ただ存在するだけで価値があるのだ……ということです。

 

なんだか啓発書っぽい響きのある言葉ではありますが……

確かに現代社会では生産性が重視されがちで、「ただ存在しているだけで……」なんて嘘っぽくも聞こえようというものです。

私自身はというと、何もできなくなってしまった祖母の看護を通して、ただ生きていてくれるだけで大事な存在もあるということを痛感した次第です。

だからそう信じられるだけかもしれませんね。

しかしながら、ここは一つ、そういうこともあるということでご容赦ください。

 

さて、もちろん、絵自体は自分と別物だと言っても、何かと競争を推奨する社会ですから数字で優劣をつけられることもありますし、腕前自体の差は歴然と存在してしまうものではあります。

ただ、ここで絵=自分と考えていると、即座に自分自身がダメな奴になってしまいます。

一方で、改善の余地があるのは自分の手前にある絵で、自分自身はそれを良くしていけると思えたら(実際そうですよ)、気持ちへの負担はかなり軽減されます。

上手い人に添削をもらっても、落ち込みを最小に抑えて前向きに向き合えるかもしれません。

自分の人格にではなく、絵についての指摘なのだと受け止めれば。

 

長々と書いてきたものの、まとめると、繰り返しになりますが「絵と自分とを別々のものだと考える」ということです。

競争、比較、優劣……こういうのは事実として存在するのは否めませんが、あくまでそれは現在の絵に対するものです。

描き手自身の価値や意味や存在理由をどうこうするものではありません。

(本当は結論の部分で新しい論点を出してはいけないのですが、実のところ、勝利や成功や名誉といったものでさえ、心の虚しさを埋めるという点では無力であったりします……)

 

絵を描いてるということは、やっぱり絵を大事にしてたり、描くのが好きだったりということだと思うので、そういう絵描き仲間のお役に立てれば嬉しいです。

 

それではまたいつか