厭世庭園

As good as it gets

練習2021/3/14

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今日は予定通り自然公園でボケーッとしてきました。

1時間半ほど馬たちを描き、貯水池の周りを散策して帰った次第です。

貯水池は浮島が多く、それらが橋で連結されて入り組んだ迷路のような体を成していて、誰かが遠い昔、飼い切れず放ったアリゲーター・ガーが巨大化して回遊してるとか、一部は霊が出たとかで心霊スポット扱いされているなど、どこか怪しさの残る地所なのでした。

 

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アーティストのためのハンドブック 制作につきまとう不安との付き合い方 | デイヴィッド・ベイルズ, テッド・オーランド, 野崎武夫 |本 | 通販 | Amazon

ところで最近こんな本を読み終えまして……

訳が壊滅的で、30P辺りで耐えきれなくなって投げちゃってたんですよね、数年前に。

これでは良くないなと思い、とりあえずは読み終えようと頑張ったのですが、所々いい感じの部分もあるものの全体的にずさんで、テキトーな仕事をしてるな、という印象がより強まった読後感でした。

 

例えば28Pに彫刻家ステファン・デ・ステイブラーの言葉が引用されているんです。

「アーティストとは、制作しない苦しみよりも制作する苦しみがまさるまで、制作には取りかからないものだ」

……というのがそれなのですが、この文章をそのまま受け取ると、アーティストは皆マゾヒストということになってしまいます。

制作する苦しみがより大きくならないと、制作には取りかからないと言ってるわけですから。

実はこれは誤訳で、「何もしないでいる時間の苦痛が作業の苦しみを上回るまで、アーティストは制作に取り掛からないものだ」というのが妥当な訳です。

訳者の経歴は立派なのですが、序盤からこんな中学で習うような構文を誤訳されては、以降の訳文の信頼性も崩れ去ろうというものです。

 

訳者あとがきの213Pにはこう書かれています。

「いずれにしてもこの通り本書はコンパクトです。

そして平易な文章で書かれているので、スタバや学食でコーヒーを飲みながら、あるいはスタジオのソファにゴロっと横になって約90分のショートトリップで、あっという間に読み終えてしまうでしょう。

図書館の椅子に座って、じっくり取り組むという種類の本ではありません」

 

しかし、もしこの本をそんな風に読めるほどハイレベルな知性や洞察力の持ち主なら、アーティストを目指すよりNASAかどこかでロケットの研究でもしてた方がハッピー♪になれるでしょう。

私の知能がカナブン並みの可能性も否定できませんが、この訳文は難解で、迂遠で、読解を拒むような直訳調の思慮のなさに溢れていて、とてもひとに勧められません。

こんな悲惨な訳を出版されるまで見逃した上、改善することもなく5回も刷ってるフィルムアート社もどうかしています。

(酷いのは他に何冊もあって、例えばブレイク・スナイダー著、save the catの法則2&3も凄惨な出来でした……)

同じ芸術系の訳書を多く出してるボーンデジタルやマール社は、まともな仕事をしているというのに。

 

訳書については、私は例えばシカ・マッケンジーさんをはじめ信頼できる訳者の手になるものでなければ、タイトル買いすることはやめています。

今回の本については、内容が切実なものなので、原著を買って自分で訳すつもりなのでした。

 

それではまたいつか